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なぜ『梨泰院クラス』のトランスジェンダー表象が下手くそなのか⁉︎会議

更新日:2023年1月6日

韓国ドラマ『梨泰院クラス』では、トランスジェンダー女性役のヒョニという役が出てきます。でもなぜか、トランス女性(MtF)ではなく、最初トランス男性(FtM)にしか見えませんでした。他にも、作中でトランスジェンダー役を描くにあたってツッコミどころが満載です。


トランス当事者の2人で『梨泰院クラス』を一気観して、感想を語り合います。日本版リメイク『六本木クラス』に届くことは期待していませんが、映像作品の作り手に届いてくれ〜。


 以下、語り手。

A:「女」から「男」への性別移行を経験した、トランス男性の周司あきら。

B:「男」から「女」みたいな性別移行を経験した、トランスジェンダーの五月あかりさん。


【トランス女性役のヒョニをみた感想】

A:あれ、MtF(=トランス女性)じゃないよ。

B:最初みたとき、めっちゃFtM(=トランス男性)っぽい人がいると思った。


A:せいぜいボーイッシュな女性だし。トランスだっていう情報を知ってから、FtMにしか見えない。

B:うん。ほんと正直言って、マジでFtMを描こうとしたのかと思ったよ。


A:FtMなら、たしかに移行前でああいう感じの人いるよね。最初、女性にしか見えてないから、なんか同僚のスングォンが風呂に誘ってるシーンが、「ヒョニを男風呂に誘ってる」という意味には理解できなくて。女のヒョニが一緒に男湯に入るわけないし、男同士の会話してるシーンだと伝わらなかった。


B:ほんとに全然わかんなかったよね。あれは、お互い裸になるから、チンコのサイズを気にしてるのか?みたいな、そういう男同士の「いじり」だったんだよね?

A:うん。

B:分かるわけなくない?

A:初めから(移行前のトランス女性には見えなくて)「女」なんだもん。そりゃあボーイッシュな女性を男風呂に誘ったらおかしいやん、みたいな。


【シス男性がトランス女性を演じるのは有害だが....】

B:真面目な話をすると、ほんとに「ただのシスジェンダー男性」の役者さんが、トランス女性役を演じて、移行後も結局「女装した男でした」みたいな、そういう表象は確かに有害だとは思う。

A:うん。


B:でも、じゃぁシス女性がトランス女性役を演じますってなったら、今回のヒョニみたいな表象になるんでしょ?

A:へったくそ!

B:そう。下手すぎ。というか、描けてないよね。

A:見てる人、ぽかんってなるよね。


B:うん。なんか(草薙剛さんがトランス女性役を演じた)『ミッドナイトスワン』的な有害さを避けるべきだとは思うんだけど、トランス女性の少なからぬ人はさ、「女装した男性」みたいに見える状態を経由するのよ。それは女装じゃないんだけど、そう見える状態をみんな経由するんだよ。その状態をちゃんと描くことから逃げて、最初から女性にしか見えない人に「トランス女性です、移行前です」ってのは、正直なんか、馬鹿にしてると思う。



【ヒョニがFtM表象な理由】

A:逆に言うとさ、「女装した男性」にしか見えないところからスタートするのがトランス女性じゃん。でさ、「ボーイッシュな女性」にしか見えないヒョニは、トランス男性に見えるんだよ。だからFtMの描写としては、よくできてるんだよ。

B:ははは(笑)


A:だってトランス男性は、みんなそこからスタートするんだもん。逆にさ、男のやくざにしか見えない同僚のスングォンが「移行前のトランス男性です」って設定だったら、意味不明じゃん。

B:そうそう。それと同じことが、今回のヒョニには起きてる。


【ヒョニとイソのシスターフッドを描き損なっている】

A:「移行前」にするような会話を、「移行後」にしていたら、それはズレてるよね。だから(シス女性であろう)イソの態度もおかしく見えるじゃん。ヒョニがちゃんとMtF役として機能していたら、「男性」だったヒョニが「女性」的になっていくのに伴って、イソが親しくなっていくのは分かるんだよ。でも視聴者的には最初からヒョニがすごい女性的に見えてるから、伝わらない。ほんとに移行の描写が上手くいってたら、トランス女性(であるヒョニ)とシス女性(であるイソ)の“シスターフッド”が築かれていく様子が描けたはずなのに、使い方が下手すぎて何も見えてこない。


B:ほんとそうだね。イソがヒョニに心を開いていく流れがあったはず。だから脚本の意図としては、ヒョニの性別移行が進んで、ヒョニが「男性」から「女性」に馴染んでいって、イソ目線では「異性」から「同性」になって、そうやって女性同士の絆が作られていく、みたいな流れだと思うんだけど、全然わからなくて。だからこそ、イソが初期にしていたトランスフォビア的な発言も、完全に宙に浮いてるよね。

A:うんうん。


B:ヒョニが女性的になっていくというパス度の向上によって、イソのなかのトランスフォビアが消されていった、という風には見えないよね。

A:トランジション(性別移行)が過程であることが見落とされている。

B:それだ!


【作中の男女比から検討すると】

A:脚本家的には、タンバム(舞台となる居酒屋)の男女比を考えると思う。でさ、ヒョニがもし男性だったら、タンバムは男性だらけになってしまう。それで多様性を考慮すると、トランスの「女性」を入れておけばいいんだ、ってなったんじゃないかな。男女比をましにして、トランスのキャラクターを入れておけば多様性を描けるという流れになり、ヒョニがトランス女性になったんじゃないかな。映像作品として。

B:ほーん。


A:思うのは、トランス男性を映像作品に出しても、画にならないというか、華にならないじゃん。「ただの男」だから。そういうとき、映像作品でトランスを出そうとしたら、必然的にトランス女性が選ばれるんじゃないかな。

B:ははは。

A:そういう視線で観ちゃう。


B:それは間違いなくあると思う。だって、トランス男性で完全に移行したら、ほんとに「ただの男」で、画面に男が1人増えるだけで…

A:なんなら元から「男の物語」なのに、さらに男が増えたら、男が渋滞しちゃうよ。

B:それはやばい(笑)

A:作り手と視聴者が歓迎する絵を示そうとしたんじゃないでしょうか。


【当事者による表象と、性別移行】

B:これは真剣に考えたんだけど、当事者による表象ってあるじゃん?トランス女性役を、トランス女性の当事者が演じるとか。

A:うん。


B:それで、今回みたいに”作中で性別移行をする”っていうのをもし描くんだとしたら、『梨泰院クラス』を観てはっきり感じたんだけど、「トランス女性の移行前の姿」をシス女性が演じるのは駄目だと思うし、

A:FtMに見えるね......。

B:そう、それに、移行後のトランス女性の役者さんが演じるのも、やっぱり変だと思うんだよね。

A:うん。


B:もちろん当事者による表象にも色んな側面があって、トランスの役者さんを演劇の世界から排除しないとか、労働の問題とかでもあるとは思うんだけど。表象によるステレオタイプをなくすとか、正しい姿を表現するってなったときに、「移行後のトランス女性」の役者さんに、「移行前」を演じさせるのも相当だめだと思う。


A:わかる。例えば(ふだん男性として生活できているトランス男性の)私がトランス男性役をやるとして、移行前みたいにもとが高い声だけどあえて低い声を出そうとしてる状態とか、再現できない。

B:そうだよね。


A:筋肉の付き方もそう。女性のものとしてコンプレックスだった状態から、男性に埋もれるものに変わっているわけだから、たとえば体重を増減させるだけの役者さんとも違って上手くいかない。

B:うんうん。

A:形が全く別物だから。

B:そうだよね。


A:それこそ私が「移行前のトランス男性」役をやってくださいってなって、高い声を出すように指示されたら、もはや「裏声を練習してる男の人」にしかならないと思う。その状態って、「移行初期のトランス女性で、高い声を出そうとしてる人」と同じだよね。

B:それはそう。かつてのわたしがそうだったように。喉ぼとけがいわゆる男性的に変化してから、でもがんばって高い声を出そうとしてたのと、同じだよね。今のあなたが高い声を出そうとするのは。

A:そうだね。


B:その演じようって有害だよね。無理だよ。真面目に話すと、なんか私たちが勝手にトランスのキャラクターを男っぽいとか女っぽいとか言ってる感じになってるけど、真剣にこのヒョニの表象はだめだったと思う。

A:シスジェンダーが頑張って考えたトランスジェンダー像だよね。リアリティがない。


B:そうそう。なんか、トランス女性役を描くときに「男性に女装させるのはだめらしい」って学習して、じゃあ次に思いついたのが、女性の俳優さんに、男性的な(ボーイッシュな)要素を付け足せば、トランス女性として正しくなるのかな?って想像したんだろうね。

A:トランス女性は「男らしさ」を引き算したいのに、そうやって足し算したから、移行前のトランス男性っぽく見えるんだよね。

B:まさにそれ。女性のいで立ちがベースで、でも性別移行前は「男性」として見せなきゃいけないから、男性的要素を女性に足してるの。でもそれって、女性を出発して男性化していくトランス男性の歩みじゃん。だからヒョニがFtMにしか見えないのは当然だと思う。

A:うん。

B:そう、私たち、っていうか今わたしは「男性」から「女性」に性別を移行したMtF的な立場で話すんだけど、一回獲得しちゃった男性的な身体の特徴とか、振る舞い方とかを引き算するのって、結構苦労する人が多いんだよ。

A:うん。


B:それでね、私たちが女性的なものを足し算すると、それって一旦は「女装」になるの。だから、ヒョニみたいな女性にしか見えない状態の人が、移行前のトランス女性ですっていうのは、そういう私たちの危険な性別移行を全部無視してて、ほんとに馬鹿にされてると感じた。

A:はいはいはい。とても分かりますよ。逆をやられたら腹立つもん。

B:はは。そうだよね。

A:男性の役者がトランス男性を演じて、もろに男にしか見えてないのに、「女にしか見られなくてつらい」って嘆いてたら、意味わからない。


【性別適合手術(SRS)だけでは急に変わらない問題】

B:それとさ、やっぱトランスの表象ってなったときに、タンバムをヒョニが1週間休むじゃない?あれって何してんの?

A:はいはい、分かる。海外で手術したことになってて、帰ってきたらタンバムの仲間たちから「おめでとう、女になった」みたいな受け入れられ方してましたね。


B:うん。意味わからないよね。海外に行くのはいいよ。タイでもアメリカでも、良い執刀医がいるし。でも1週間はおかしいよね。睾丸摘出だけだったら、まぁ1週間で働けなくもないけど、立ち仕事はそれでもきついと思うし、睾丸摘出だけで海外はいかないよねー。

A:それで、チンコ取った!って察して欲しいんだろうか。無理があるよ。


B:うん。1週間じゃSRSして入院ベットの上でしょ。歩行の練習も再開してない人いそうだけど。それに、1週間っていう期間も変だけど、やっぱり「手術をする=性別を移行する」っていう最悪のイメージ、シスジェンダーが思い描く偏見そのままだったよね。

A:それだけでは見た目変わってないしね。


B:それはさっきの問題とつながるね。初期の設定上は「男扱い」なんだけど、視聴者的には最初から「女」に見えてるわけだからね。なんか急に「女性になって帰ってきた!」みたいなやつ、意味わからなかったよ。

A:…(頬をふくらます)…。


【4年後、逆にMtF表象になっていた件】

B:ところがどっこい。4年後の会社IC(=梨泰院クラス)。いきなりヒョニがMtFっぽくなってんだよねこれが。

A:金持ちになって、美容品に手が届くようになって、女らしさを無理にプラスしたら、MtFっぽい表象に。


B:そうそう。ほんとそうで、金持ちになったから色々身に着けるものとか化粧品とか変えて、リップの色も濃い赤になって。そうやって女性らしさをプラスしていく、それも違和感がある仕方で。さっきまで居酒屋のキッチンだったのが、大企業で高給取りになって、不自然にそういう女性らしさをプラスした結果、さっき言ってたような変な「足し算」が成立して、一気にさ、「性別移行がそれなりに進んでる途中のMtF」になったよね。


A:うんうんうんうん。

B:あれはわざと…じゃないよね。

A:ははは(笑)見事なFtMからMtFへ。


B:でもさ、わたしあのしょうもない手術して帰国後のヒョニは、「埋没系のMtF」にちゃんと見えてたよ。


A:あー、ちょっと分かる。役者がどこまで意識してるかは分からないけど、最初はがんばって男要素を足そうとしているから「FtM」っぽく見えてたんだけど、途中からは自然に女性として生きればいいから「埋没MtF」になったんだよね。でも後半に変な女性らしさを足したから、「試行錯誤中のMtF」になったんだよね


B:うんうん、

A:12話でテレビ番組の「最強の居酒屋」に出たりして、トランスだとアウティングされてたころが、一番埋没状態に近かったから、本当はあのときにアウティングされても、本人目線的には痛くもかゆくもなかったはず。

B:ただ、逆にあそこまで埋没可能で、世間的には「美女料理家」みたいに言われてたからこそ、過去を暴かれるダメージは大きくなりそうだけどね。


A:それはそう。だから女子トイレにいるシス女性たちがヒョニを見た途端、「同じトイレ使うの嫌だ」って言ってるのは違和感あった。当たり前に女子トイレにいた人を急に追い出してる描写に見えたから。

B:だからこそトランスフォビアが際立ってもいたけどね。さっきまで同じ場所にいたのに、過去の来歴を知った瞬間に「女性」の枠から追い出したくなるみたいな。


【トランスジェンダーは「ダイヤモンド」みたいに輝く存在?】

B:ところで、(イソがアウティングされたヒョニを励ますために送った)"ダイヤモンドの詩"はどうだった?

A:イソがヒョニを純粋に励ます、という風に見ることもできるけど......。イソが恋愛脳だったことを思ってしまうと、大好きなセロイに勝ってもらうために、無理やりヒョニを励ましてるように見えて。イソがせこいって言うか。

B:うんうん。わたしも打算的な側面の方が強かったのかなとは思った。


A:ほんとは、(トランスジェンダーのヒョニを)「ダイヤモンド」とかに喩えられると、トランスジェンダーを非人間化してるように見えた。そこにただいるだけで居てもよかったのに、輝いていなくてもよかったのに。そういう風にトランスジェンダーが位置づけられたのはイマイチ。

B:そうだよね。


A:ほんとはダイアモンドなんかじゃなくて、ただの石ころでいたかったのにね。「あなたはマイノリティで特別だ」っていうのは、当事者からしたら嬉しくないんじゃないでしょうか。

B:ほんとにそれは思った。「あなたは輝いてるよ」って、すごい嫌な感じ。石ころでいたかったというのも分かる。

A:石ころでいさせてくれない世間を責めるべきところ。


B:それはそう。それを踏まえてだけど、でもあの詩の中で、「暗闇の中でもダイヤモンドが輝いてる」みたいな箇所は、ちょっとだけ好きだったかも。なんていうか、あんまりジェンダー・アイデンティティとかそういう概念しっくりこないけど、でも周りからは石ころにしか見えてなくても、たった1人自分だけは自分が誰かを知ってるっていう状態をトランスの人は経験することがあるから。なんというか、別に輝いてなくてもよくて。

A:うんうん。詩の中盤あたりはいいメッセージだった。でもアウティングされてテレビに出させられて、酷い場面として片づけられちゃった。


【トランスジェンダーは自然の摂理に反している?】

B:同じように、同僚のスングォンのセリフもすごい傷ついた。「自然の摂理に沿って人は生きるべきだ」みたいなことを言ってて、自然の摂理によれば、人間は男か女で、それも生まれたときから決定されてて。そんな絶対的な摂理にヒョニは逆らってるんだって、スングォンは言ってて…。

A:そのセリフ、半世紀くらい時が止まってる。


B:そう。最終的には、そんな自然の摂理にすら立ち向かう力強いヒョニなんだ!っていう風にポジティブに落とすんだけど、聞いてる私たちからしたら、全然ポジティブなメッセージには受け取れないというか。

A:興ざめ.....。

B:そう、興ざめ。摂理とか知らんがなだし。自然に反した果敢さとか、私たちに見出されても困る。


A:自然に生きようとしたら、その結果、トランスジェンダーという状態になっただけだから…。むしろ「自然に反した果敢さ」っていうのは、トランスの人が無理やりシスみたいに生きようとすることだよ。

B:言えてる。わたしも昔は自然の摂理に反して「男」として生きようとしてたわ。


A:分かる。でももう思い出せない。どうやって以前「女」みたいにやってたのかな、自然な状態じゃなかったんだけど。あんまり記憶がない。

B:わたしは逆にめっちゃ記憶あるけどね。

A:憎しみと共に?


B:そうだよ。その点、ヒョニから世界への憎しみとか、トランスであるせいで傷ついてきた経験とか、そういうの全然感じられなかったのもどうかなとは思う。特に比べるわけじゃないけど、トランス女性はある時期は結構辛いことも多いからさ。


A:ヒョニの役柄は、ぱっと見シス女性だから。「そういえばトランス女性(という設定)でした」って付け足されても、そりゃ苦しみなんか描かれないですよ。

B:うん。ごく何気なく、この人は性別を昔変えたんだよー。みたいな人物が出てくるのは全然いいと思うんだけど…。

A:性別移行と無縁に見えたからだよね、ヒョニが。

B:そうなの。


【トランス当事者が演じれば済むのか?】

A:「移行後のトランス」が「移行前のトランス」を演じるのが無理って話の続きだけど、私は女性差別を受けていたときのことを覚えていない。(女性としての)性差別を受けていたし、(トランスとしての)性別違和もあってダブルで辛かった状態から、男性化した今はどっちも感じてないから。あなたと同じトランスの役ですよと言われても、完全に別の人物の役を演じることになってしまう。

B:なるほどね。


A:たまにあるじゃん?「トランス男性は生理を経験したことがあるから女性の経験が分かる」とか。私は最近、トランス女性的な人との関わりも多いから、「生理のある身体」について全然分からなくなってて、リアリティがない。「そうだった、生理のある人がいるんだ」と驚いてしまって、もうただの「有害な男」になってしまう。

B:そりゃ、忘れるよね。


A:自分ごととして、以前に起こったことを怒ったり嘆き悲しんだり、っていう感情がなくなっていて。

B:なるほどね。


【トランス男性が政治に鈍感になれてしまう理由】

B:なんか、トランスヘイターのなかには「(同じように)女の子として育てられてきた」っていう事実をすごい重視して、トランス男性をシスターフッドに連れ込もうとする人たちっているけど、あなたみたいに移行後の人たちはリアリティを忘れていくし。ただ性差別だけじゃなくて、性別違和までダブルで経験してたってなると、「女性の経験」とか「女の子として育てられた」とか、あんまり簡単に言えないよね。

A:うん。それに今は、女性としてもトランスとしても、性差別を受けてないから、とても鈍くなった。


B:そうか。わたしは「男」だった時は男やらされるのが辛いし、そもそも性別をやらされるのが辛いし。「女」みたいになったら、今度は性差別的なことに巻き込まれるし、鈍感になるタイミングが全然なかった。

A:トランス男性が政治的ではない理由って、それだよね。性差別に鈍感になれちゃうの。


B:それだ、だからか。結構、政治的な主張をするトランスの人っていうとトランス女性が目立ちがちなのは、性差別に鈍感になれないからなんだね。

A:めっちゃ面白い。

お疲れさまでした。



会話中の表記「FtM」は、身体治療する際に「Female to Male(女から男へ)」に見えるため用いられてきた略称です。しかし2022年現在では、本人のジェンダー・アイデンティティが「男性」であることに注目して、「トランス男性(Trans man)」と呼ばれることが多いです。なお「MtF」の場合は、その逆です。「Male to Female(男から女へ)」ではなく、本人のジェンダー・アイデンティティが「女性」であることに注目して、「トランス女性(Trans woman)」と呼ばれることが多いです。


ヒョニの場合は、「男性」という設定から「女性」に性別移行していった、トランス女性(MtF)という設定です。俳優のイ・ジュヨンさんの性別については、公表されている情報をもとに「女性」という前提で話を進めています。


当事者間での用いられ方については、別記事(日本での「FtM/MtF」呼びは、「トランス男性/トランス女性」に変わるのか)をご参照ください。

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