※個人ブログとして利用してきたこのサイトWixがイスラエルの代表的企業であることやイスラエルがここまで酷い「国家」であることを知らずに利用してきたため、どうしたものかと頭を抱えています。イスラエル軍はパレスチナ人を最後の1人まで殺し尽くす気なのでしょう。イスラエル企業&支援企業はボイコットできるところからする気ですが、現に利用しているこのサイトはまだ使うことになりそうです。便利なものの裏には何があるのかわかりませんね…。
@solakofiさんがまとめてくださっているリスト>
【植民地主義に抗い民衆と連帯するアクションリスト】
プライベートなことではなく、対外的なことをまとめたいのですが、とはいえ私自身の変化も大きい1年でした。
自身の希死念慮が強すぎるときは、他者が死のうが殺されようが正直どうだってよかったのです。「社会」と呼ばれるもののすべてに無関心でした。色々考えられるようになってきたのは、自身の性別違和がほとんど解消されて、金銭的な切迫感から少しばかり距離を取れるようになったからです。しょうもないシステムだな、とようやく憤っています。
さて、2023年は、力不足でありながらフライングで色々やらせてもらいました。
4月に『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』(明石書店)発売。それに先立って「あかり&あきら ZINE」を無料配布したり、いくつかの書店さんに置いていただきました。ご協力いただき誠にありがとうございます。なお、 ZINEにした2人の対談はオンラインでも読めます。
編集者が介在しないまま始まる往復書簡が商業出版されるケースは珍しいんじゃないでしょうか。表紙デザインや構成まで希望を叶えていただき、一冊の本になりました。「第1章 身体がはじまる」などの項目は、私から提案したものをそのまま採用していただいたかたちです。「表紙デザインには手紙で交わされた言葉を使ってほしい」というリクエストも、装丁の清水肇さんが実現してくれました。
2022年に明石書店から『トランスジェンダー問題』邦訳が刊行されてトランスジェンダーの本がきちんと「売れる」実績ができたからこそ可能になったのかなと受け止めております。
私と手紙を交わした五月あかりさんについて、「本当に実在するの?」と聞かれたことがありますが、五月さんはそのことを知って笑っていましたよ。
7月『すばる8月号』は「トランスジェンダーの物語」が特集でした。なんと私もお声かけいただき、随想「家父長の城」を寄稿しました。私の友人に「芥川賞を取る」ことが目標の人がいるのですが、そやつより早く文芸誌に載せていただけるとは…..。
「家父長の城」は誌面4ページ分です。そのなかに、「女側から男側へ性別移行を経て、家父長制がどう映るか」のテーマを詰めました。
同号掲載の川野芽生さん『Blue』は、胸にくるものがあったので、芥川賞候補になって書籍化するそうで嬉しいです。
7月には『トランスジェンダー入門』(集英社新書)も発売。瞬く間に4刷、じんぶん大賞3位、ありがとうございます。もし学級文庫に置いてあったらそのときは手に取らなかったとしても、5年後にやっぱり読んでしまうような本を目指して書きました。
刊行イベントも色々やらせてもらいましたね。ほとんどは共著者の高井ゆと里さんが頑張ってくれて、私は顔出しせず生活を守り続けていますが、李琴峰さんとエトセトラブックスの松尾さんとのイベントは私も参加しました。現在のトランスジェンダーの置かれている状況について、李琴峰さんが「同性愛者たちがエイズ禍で引きずりだされた歴史に似ている」と仰っていたのが印象的でした。
2023年はLGBT理解増進法が成立、経産省でトランス女性に対しトイレ利用を制限していた件で最高裁の違法判決、性同一性障害特例法の生殖不能要件に違憲判決、と法律レベルで否応なく可視化される出来事が続きました。だから、エイズ禍で同性愛者が変革を目指すしかなくなったように、トランスジェンダーへの差別撤廃に向けて動かなくてはならないのだと理解しました。トランスジェンダー入門の刊行記念イベントは、可能な限りWeb記事化しています。
8月はエッセイとブックガイドを寄稿した『われらはすでに共にある:反トランス差別ブックレット』(現代書館)が発売。2022年11月発売の ZINE増補版に参加させていただきました。
『すばる』の随想は、依頼を受けて1分ほどで何を書くか思い浮かんだのです。でも『われらはすでに共にある』に何を書くか、1ヶ月まるまる悩みました。トランスジェンダーの当事者的なスタンスで私の体験を掘り下げるか、トランス男性への差別を筋道たてて語るか。結局、「差別(とそれに抗すること)」よりもっと手間から話を始めようと決めてエッセイを書きました。トランスジェンダーの人は存在するし、かれらを愛するひともいる、ということです。
特別に追加してもらったブックガイドでは、虎井まさ衛さんの『語り継ぐトランスジェンダー史』を紹介しました。90年代から顔出しして情報発信している日本のFtM(トランス男性)はほとんどいないなかで、重荷を引き受けて活動していた方だと思っています。
なのでエッセイもブックガイドも、原点回帰がテーマですね。最近SNSで流行っているから差別やトランスジェンダーに興味をもった、という人には「ずっといた」と示す必要があると考えまして。
11月にはWebあかしに「書籍でふり返るトランスジェンダー史」を掲載してもらいました。
漫画や写真集といった書籍には個人的にほとんどアクセスできていないので、ここに掲載できなかったものも語り継いでいってほしいです。
この機会にたくさんトランスジェンダーの本を読みました。エトセトラの男性学の方でも選書したので、10月はトランスジェンダー関連50冊+男性学関連25冊と、選書リストには載っていない本も読んだので大忙しでした。なんか賢くなった気がする。
『現代用語の基礎知識2024』発売。
性別とは何か、トランスジェンダーの状況とは。高井ゆと里さんと執筆しました。
11月はついに『エトセトラVOL.10(特集 男性学)』発売。特集編集をやらせていただくことになって、男性学に夢中になる楽しい一年でした。
「あとがき」に書いたように、この号は「特権」「加害性」「生きづらさ」の3ワードを基本的に封じています。これは世間一般というよりは、男性学に関心があって、かつフェミニズム雑誌のエトセトラを手に取る、という人向けの課題といえるかもしれませんが、これら3ワードを使えば気軽に「僕はジェンダーの問題や性差別を考えています」というポーズを取ることが出来ると思うのです。しかし、そんなつまらないことはやめてほしいな、という私からの要求です。男性が得ている特権や無意識でも身についてしまう加害性、個々の生きづらさ(=それを「男性の生きづらさ」として語るケースが男性学では多いですが)があることなんて、いうまでもなく当たり前です。それを、男性社員の多い飲み会とかで披露するなら良いエピソードでしょうけれども、フェミニストの読者が多くいるエトセトラの誌面でわざわざやる必要はないですもんね。
女性の方をチラチラ見てなにかカッコつけたことを言うのではなく(やるべきことは黙ってどんどんやってください)、男性は男性の話をガンガンしてほしいです。それは当然、性差別や他のあらゆる差別に無頓着であることとは違います。
少ない誌面でクリアできたことは少ないものの、いくつかヒントが散らばっている特集になったかと。エトセトラの店舗では、男性学の選書も25冊分しました(2024年の1月中旬まで展開されているみたいです)。誌面で語りきれなかった視点を選書で少しでも補えていたらいいです。
12月は図書新聞で大々的に『トランスジェンダー入門』のインタビューを掲載してもらいました。12月23日にはエトセトラの特集に参加していただいた小埜功貴さんとトークイベントをしました。直前まで体調不良だったものの、男性学やメンズリブの話をしていると元気になりました。
あと、まだ表に出ていませんが、ようやく男性学の本を書くことにエンジンがかかったので、12月中はずっと考えて書いていました。『トランス男性による トランスジェンダー男性学』を書いた頃には手の届かなかった話を、今度こそちゃんとしたい。2024年中に世に出す気でいます。
男性を理解するための3つのW「女性(woman)」「仕事(work)」「戦争(war)」のうち、ここ最近の男性学は「女性(とりわけ異性愛)」と「仕事(とりわけホワイトカラー)」に偏りがちだった印象がありますが、もう「戦争」や国家総動員の人殺しについて、無視できないのではないでしょうか。
以上、振り返りはおわり。
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