最近のトランスジェンダー本に一言感想。
- 周司あきら
- 2023年4月8日
- 読了時間: 4分
五月あかりさんと書いた『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』がもうすぐ刊行されます。書店では『ウィッピング・ガール』と並ぶのかな?ワクワクします。
2019年以降刊行されたトランスジェンダー関連の本を並べて、一言メモを書き出しました。読んだけれどここに記載していない本、知っているけれど読んでいない本、たぶん知らない本、もまだあります。
吉野靫
性別を規定するうえで絶大な影響力を誇る、医療と法律。そのいずれもに対して、医療を必要とする当事者の立場から意見を出すのがいかに難しかったかがうかがわれます。この本の出版は2020年ですが、2000年代のトランスコミュニティの動きがわかるのは貴重ななことです。
ゲイル・サラモン、藤高和輝 訳
いつの間にか重版出来ていました、嬉しい。私は第4章「トランスフェミニズムとジェンダーの未来」を興味深く読みましたが、理論的なページを再読したい。
no.////(ナンバーフォー)
トランスの男たち(FtM)10人によるフォトエッセイ。身体や経験や感覚など、他の人とは違ってコンプレックスになりやすいところを、自ら語っていくスタンス。ぜひシス男性版の「COMPLEX」も読んでみたいものです。
周司あきら
2021年12月に出版しました。 前半の男性学パートは補足したい箇所もありますが、トータルで見て、シスの男性からの応答(リアクション?アクション?)も見受けられるのは何よりです。後半のトランス男性(FtM)パートは、まだ日本語で読める情報が少ないので、私も探していて面白かったです。本当は、私が書かなくても、こういった情報が日本語圏のFtMコミュニティにまとまった分量で蓄積されていたらよかったのですが。
町田奈緒士
トランスジェンダーの生ける質感を、語り合いの現場から読める一冊。女性は女性でも、トランス女性がシス女性にすんなり同一感を得られない、など「どこかで聞いたことある」ぼやきが事例としてまとまっています。 とはいえ「あとがき」にあるように、本来ならシスジェンダーの人も性別の曖昧さや習得する違和感などは経験してきたはずなんですよね。
博士論文が元であり、「第一部 理論編」にもけっこうページが割かれています。
ショーン・フェイ、高井ゆと里訳
あれから考えています。リベラル・左派は、オンライン上の「差別」を仲間内で告発して終わりにするのではなく、右派が地道に地道に築き上げてきたくらいの幅広い「洗脳」や「教育」を、少しくらいできるようにならなきゃ永遠に世の中は変わらないな、と統一地方選挙を前にして思います。
ポール・B.プレシアド、藤本 一勇訳
聴衆である多くのシスジェンダーたちを取り乱させる、トランスの身体。
だが、プレシアドさんがこうした"技"を繰り出すことが可能なのは、(トランスミソジニーや女性性嫌悪の影響を受けずに済む)FtMスペクトラム上の人間だからでしょ?って、『ウィッピング・ガール』の著者ジュリア・セラーノさんなら言うのかな。
勝又栄政
前半は、トランス男性の「少女」時代と、母親目線の記述。後半は、一通り性別移行が済んで、男側で生きるようになってからの困難が書かれています。トランスパーソンの移行後の経験を共有することは、正直すごく大事だと思います。もっと増えてほしい。 勝又さんはトランス男性と父親の関係についても研究しているみたいで、そちらも気になります。
五月あかり/周司あきら
ふたりの往復書簡ですから、すごくプライベートな話であるには違いないのだけど、読んだ人は自分の感覚を自分の言葉で語ってみたくなるかもしれません。それが楽しみです。 「埋没」はトランスコミュニティで用いられる言葉で、「トランスジェンダーだといっさい知られずに、望む性別とだけ認識されて生きていくこと」を指しますが、タイトルはダブルミーニングです。「埋没」しているシスジェンダーの世界を暴き出すために、この本は必要なのです。
ジュリア・セラーノ、矢部文訳
女性性をエンパワメントしよう!という発想、私自身から出てくることはないので、視点が全然違くて面白かったです。中盤はトランスジェンダーの定義の話が長めにあります。
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ほか、トランス男性の自伝に『トランスジェンダーの私が悟るまで』(荒牧明楽)や『元女子、現男子。 』(木本奏太)などが出ています。小説では『52ヘルツのクジラたち』、『スモールワールズ』、『ハーフムーン街の殺人』などにトランス男性が出てきますね。
短めですが、ここで終わり。
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